その言葉が、ずっと頭から離れなかった。
「ねえ、もうFXやめてほしい。」
去年の11月、妻にそう言われた。
普通のトーンだった。怒鳴ったわけじゃない。でもそれが余計つらかった。もう怒る気力もないと言うような、諦めた口調だった。
その月、俺は22万円負けていた。
それまでの俺
会社員、35歳、妻と子供ひとり。副業でFXをやって2年半。
月に1〜2回、「あー今月もダメだった」と思いながら、翌月また始める。負けた原因を「相場のせい」「ニュースのせい」にしながら、でも「来月こそ」と思いながら続けていた。
まるでギャンブルだ、と自分でも薄々わかっていた。でも「俺はちゃんと分析している。ランダムじゃない」と思いたかった。
妻の言葉を聞いたとき、俺は反論できなかった。
「2年半、まともに勝てていない。なぜ俺は続けているのか。」
初めてその問いと本気で向き合った。
「俺は何がわかっていないのか」
その週末、TradeJournal というサービスを使い始めた。
理由は単純だ。「このまま続けるならせめてデータを取ろう。なぜ負けているのかを、本当に理解しようとしてみよう」と思ったから。
最初の1ヶ月間、毎日のトレードを全部記録した。銘柄、損益、時間帯、そのときの感情(冷静・興奮・焦り・退屈)、ルール違反の有無。
そして最初のAIレビューが届いた。
AIが突きつけてきたもの
レポートの冒頭にはこう書かれていた。
「先週のトレードを分析しました。注目すべき点が2つあります。1点目:感情状態が「焦り」のときのトレードの勝率は14%です(「冷静」のときの勝率59%と比較)。2点目:ルール違反トレードは全体の44%を占め、その平均損益は-11,400円でした。ルール遵守トレードの平均損益は+800円です。」
感情が「焦り」のとき、勝率14%。
心当たりがありすぎた。連敗が続いたとき、損失を早く取り返そうと思って次のトレードに入る。「もう1本だけ」と思うとき、大体焦っている。
ルール違反トレードの平均損益-11,400円。ルール遵守トレードの平均損益+800円。
この数字を見たとき、全てがわかった。
俺のトレード自体は「ほぼ正しかった」。
ルールを守っているときは、ちゃんと+800円を積み上げていた。でも感情が乱れたとき、ルールを破った瞬間、-11,400円飛んでいた。
2年半のマイナスの正体は、「下手なトレード」じゃなかった。「焦ったときのトレード」だった。