FXで成行注文を出したとき、画面に表示されていた価格とは異なる価格で約定することがある。これが「スリッページ」だ。1回のスリッページはわずか0.1〜数pips程度でも、月に何十回も発生すれば、見えないコストとして利益を着実に削っていく。
この記事では、スリッページの仕組み、発生原因、対策方法、そしてスリッページを記録して分析に活かす方法を解説する。
スリッページの仕組み
スリッページとは、注文時に指定した価格(または表示されていた価格)と実際の約定価格の差のことだ。成行注文では、注文を出してから約定するまでのわずかな時間に価格が動くため、スリッページが発生する。
スリッページの例
・表示価格150.000でUSD/JPYの買い注文を出す
・実際の約定価格が150.003だった
・スリッページ = 0.3pips(不利な方向)
スリッページは有利な方向に滑ることもあるが、一般的には不利な方向に滑ることの方が多い。これは注文が集中するタイミングでは価格が注文方向に動きやすいためだ。
スリッページが発生する主な原因
原因1:市場の流動性の低下
早朝(日本時間5〜7時頃)や週明けの窓開けなど、市場参加者が少ない時間帯は流動性が低く、注文に対する対当取引が見つかりにくい。結果として、指定価格から離れた価格で約定する可能性が高くなる。
原因2:経済指標発表時の急変動
米雇用統計やFOMC金利決定などの重要指標発表時には、価格が瞬間的に大きく動く。このとき出した注文は、表示価格から大きくかけ離れた価格で約定する場合がある。指標発表直後のスリッページは10pips以上になることも珍しくない。
原因3:注文方式(DD方式 vs NDD方式)
FX業者の注文処理方式もスリッページに影響する。DD方式(ディーリングデスク)では業者が介在するため、価格の再提示(リクオート)が発生することがある。NDD方式(ノーディーリングデスク)ではインターバンク市場に直接注文が流れるが、流動性次第でスリッページが発生する。
スリッページを軽減する対策
- 許容スリッページの設定:多くの取引ツールでは、許容スリッページ(何pipsまでなら約定を認めるか)を設定できる。狭く設定すれば約定しないリスクが増えるが、不利な約定は避けられる
- 指値注文の活用:成行注文の代わりに指値注文を使えば、指定価格以上での約定を防げる。ただし約定しないリスクがある
- 流動性の高い時間帯に取引する:東京・ロンドン・ニューヨークの主要セッションが重なる時間帯は流動性が高く、スリッページが起きにくい
- 重要指標発表前後を避ける:経済カレンダーを確認し、重要指標の発表前後30分は成行注文を控える
- 約定力の高い業者を選ぶ:業者によって約定力は異なる。約定率や平均スリッページを公開している業者を選ぶのも一つの方法だ
スリッページを記録して分析する方法
スリッページの影響を正確に把握するには、毎回のトレードで「注文価格」と「約定価格」の差を記録することが有効だ。
スリッページ記録のポイント
・注文価格と約定価格の差(pips)
・スリッページが発生した時間帯
・そのときの通貨ペアと取引量
・経済指標発表の有無
これらを1ヶ月分集計すれば、「月間のスリッページによる損失総額」「スリッページが多い時間帯」「業者ごとのスリッページ傾向」が見えてくる。データに基づいて取引する時間帯や業者を見直すことで、見えないコストを削減できる。