米雇用統計、FOMC、CPI——重要な経済指標の発表前後は、相場が大きく動く。この大きな値動きを狙って利益を出したいと考えるのは自然なことだ。しかし実際には、経済指標トレードで安定して勝っている個人トレーダーは少数派だ。
この記事では、経済指標トレードが見た目ほど簡単ではない理由と、自分のデータを使って指標時のトレードを評価する方法を解説する。
経済指標トレードが難しい3つの理由
理由1:スプレッドの急拡大
重要指標の発表前後、特に発表の数秒前から数分後にかけて、スプレッド(売値と買値の差)が通常の数倍から数十倍に拡大する。通常1.0pipsのスプレッドが、指標発表時には5〜20pipsに広がることも珍しくない。
つまりエントリーした瞬間にスプレッド分のマイナスからスタートすることになる。相場が予想通りに動いても、スプレッド拡大分を超えなければ利益が出ない。
理由2:スリッページ
経済指標発表時は注文が殺到し、相場が急変動するため、指定した価格で約定しないことが多い。これがスリッページだ。成行注文では意図した価格よりも不利な価格で約定し、逆指値注文(ストップロス)も設定値よりも大きく滑ることがある。
スリッページの例
・指値150.00で買い注文 → 実際の約定:150.12(+12pipsのスリッページ)
・ストップ149.70で設定 → 実際の決済:149.55(-15pipsのスリッページ)
・想定損失:-30pips → 実際の損失:-57pips(約2倍の損失)
理由3:「行って来い」のダマシ
経済指標発表直後に一方向に大きく動いた後、すぐに反転して元の水準に戻る「行って来い」のパターンは非常に多い。初動の方向にエントリーしたトレーダーは、往復ビンタで損失を被る。
この現象が起きる理由は、指標発表直後に機関投資家のアルゴリズムが瞬間的に売買を行い、個人トレーダーの注文を刈り取った後に本来の方向に動くことが多いためだ。個人トレーダーが反応する頃には、すでに最悪のタイミングでのエントリーになっている。
指標前後の勝率データを分析する方法
経済指標トレードを続けるべきかやめるべきかは、自分のデータで判断するのが最も確実だ。以下の手順で分析を行う。
- タグで分類する:指標発表前後30分以内のトレードに「指標トレード」というタグをつけて記録する
- 30回以上のデータを集める:最低でも30回分の指標トレードデータを蓄積する
- 通常トレードと比較する:指標トレードと非指標トレードの勝率・平均損益を比較する
比較分析の例(6ヶ月間)
・通常トレード(95回):勝率57%、平均損益+6.2pips、月間+35,000円
・指標トレード(32回):勝率44%、平均損益-3.8pips、月間-12,000円
・指標トレードを除外した場合の月間収支:+47,000円(+12,000円の改善)
この例では、指標トレードをやめるだけで月間収支が12,000円改善する。指標トレードは「やらない方が稼げる」ケースが多い。
指標トレードとの付き合い方
データで指標トレードの成績が悪い場合、選択肢は3つある。
選択肢1:指標時は完全に見送る
最もシンプルで効果的な対策。重要指標発表の前後30分はトレードしないというルールを設ける。経済カレンダーを毎朝確認し、指標の時間帯をブロックしておく。
- 毎朝、当日の重要指標の時間を確認する
- 指標発表の30分前にポジションを整理する
- 指標発表後30分間はエントリーしない
選択肢2:指標後の落ち着きを待ってからトレードする
指標発表直後の混乱を避け、方向性が明確になった後(発表後30〜60分後)にエントリーする方法。スプレッドが通常に戻り、ダマシの初動が落ち着いた後であれば、トレンドに乗りやすい。
選択肢3:既存ポジションの管理に集中する
指標発表前に既にポジションを持っている場合は、新規エントリーではなくリスク管理に集中する。ストップを狭める、一部決済するなどの対応を事前に決めておく。