移動平均線のクロスで負けたから次はボリンジャーバンド。それでも勝てないからRSIに変更。3連敗したらまた別の手法を探す——こんなサイクルを繰り返していないだろうか。
手法を次々と変える「手法ジプシー」は、FXトレーダーの最も多い悩みの一つだ。しかし手法を変えること自体が成績を悪化させている可能性が高い。この記事では、手法ジプシーの原因と、1つの手法を極めることで得られるデータ上の効果を解説する。
なぜ手法をコロコロ変えてしまうのか
手法ジプシーになる原因は、大きく分けて3つある。
原因1:サンプル数が足りない
新しい手法を試して5回中3回負けたら「この手法はダメだ」と判断していないだろうか。しかし統計的に信頼できる結果を得るには、最低30回のサンプルが必要だ。5回のトレードでは、勝率50%の手法でも0勝5敗になる可能性が3%以上ある。
サンプル数と判断の信頼性
・5回:勝率の誤差 ±30%以上(ほぼ判断不能)
・10回:勝率の誤差 ±20%程度(まだ不十分)
・30回:勝率の誤差 ±12%程度(最低限の信頼性)
・50回:勝率の誤差 ±9%程度(判断可能)
・100回:勝率の誤差 ±7%程度(信頼できるデータ)
つまり10回程度のトレードで手法の良し悪しを判断するのは、コインを10回投げて「このコインは表が出やすい」と結論づけるのと同じことだ。
原因2:他人の結果と比較している
SNSや掲示板で「今月+100pips」という投稿を見ると、自分の手法が劣っているように感じる。しかし他人が公開するのは好調な時期だけだ。1つの手法を続けているトレーダーも、不調期は必ず経験している。
原因3:不調期を「手法の問題」と混同している
どんな優秀な手法にも、相場環境に合わない時期がある。トレンドフォローの手法はレンジ相場で負け、レンジ戦略はトレンド相場で負ける。これは手法の欠陥ではなく、相場環境との相性だ。
1つの手法を続けることで得られるデータ効果
手法を変えずに30回以上のトレードを記録すると、以下のような分析が可能になる。
- 時間帯別の勝率:東京時間は勝率65%だが、ニューヨーク時間は45%
- 通貨ペア別の勝率:USD/JPYは好調だがGBP/USDは不調
- 曜日別の傾向:月曜日と金曜日は負けやすい
- 相場環境別の適性:トレンド相場では勝率70%だがレンジでは35%
1手法を50回続けた場合の分析例
・全体勝率:54%(微妙に見える)
・東京時間のみ:勝率68%、平均+12pips
・NY時間のみ:勝率38%、平均-8pips
→ NY時間を除外するだけで全体勝率が68%に改善
手法を変えていたらこの分析は不可能だった。同じ手法を継続したからこそ「いつ使えばいいか」が見えてきたのだ。
1つの手法を正しくテストする手順
以下の手順で1つの手法を評価すれば、感情に左右されず客観的な判断ができる。
- ルールを明文化する:エントリー条件、決済条件、損切り幅、利確目標、トレードする時間帯をすべて書き出す
- 最小ロットで30回トレードする:この期間は利益を出すことが目的ではない。データを集めることが目的だ
- 全トレードを記録する:勝ち負けだけでなく、時間帯、通貨ペア、相場環境、感情も記録する
- 30回の後にデータを分析する:全体の勝率、リスクリワード、時間帯別の成績などを確認する
- 条件を絞り込む:成績の良い条件だけに集中し、悪い条件を除外する
- さらに30回テストする:条件を絞った状態でもう30回。ここで初めて手法の評価ができる